研究概要

 当研究室では、脳の情報処理の仕組み、特に、神経細胞をはじめとする脳神経系のハードウェア的特性と脳計算理論のリンクを目指し、主に数理的解析手法・モデルシミュレーションにより研究しています。

 現在、研究室で取り組んでいる主なテーマは以下の通りです



運動機能・運動疾患と神経回路動態の関係性およびその治療法の解明

 大脳基底核は運動性情報を司る脳部位の一つであり、その疾患により運動障害が生じます。正常な運動と運動障害といった行動レベルの現象と大脳基底核神経回路の活動の間には密接な関係があるとされていますが、その仕組みについては不明な点も多いです。当該神経回路のモデルシミュレーションによりその関係性について調べます。

神経細胞活動の時系列データを高精度に予測する手法の開発と情報処理機構の解明

 神経回路の基本構成要素である神経細胞=ニューロンは、強い非線形性を持つため、同じ入力に対する応答が一定ではありません。また、従来考えられていたように単純な情報伝達ではなく、単一のニューロンレベルでも複雑な演算が可能であると示唆されています。ニューロンのもつ応答特性を再現するモデルを構築することにより、単一ニューロンでの情報処理について調べます。

神経回路モデルの大規模シミュレーション技法と時空間活動データ解析手法の開発

 計算機性能の向上により、これまで以上にリアルで大規模な神経回路モデル(数千~数万個)のシミュレーションが可能となっています。この計算機上に構築した仮想神経回路を直接調べたり、また、シミュレートされた大規模データを基に、実際の神経回路の実験データへの適用可能な解析手法の開発を目指します。

ニューロン集団・シナプス可塑性の動力学に基づいた行動学習のモデル化

 ヒトの脳機能に感化された機械学習理論(強化学習やベイズ推定など)のアルゴリズムは、ニューロンやシナプスに課される生物学的な制約条件の下で神経回路に実装可能かどうかは必ずしも自明ではありません。その実装可能性を調べることにより、脳計算理論と機械学習論の差異や類似性について検討します。